健康診断の結果を将来の健康につなげましょう
健康診断は、病気の発見だけでなく、将来的な病気リスクを知ることにも役立ちます。結果に合わせた対応を行って、その後の健康や生活の質を守ることにもつなげることができます。そのためには、検査結果の内容を正確に理解することが重要です。
健康診断の結果の見方
健康診断の結果には、「異常なし」、「要経過観察」、「要精密検査」、「要治療」などがあります。
異常なし
正常範囲内の検査結果です。
要経過観察・要再検査
正常範囲ではありませんが、緊急な対応は必要ない状態です。ただし、数ヶ月~1年後に再検査が必要になります。生活習慣を改善することで正常範囲に戻すことも可能ですが、なにもせずにいると悪化してしまう可能性もあるため注意が必要です。
要精密検査
健康診断だけでは特定できない疾患の可能性があり、より精密な検査を受ける必要がある状態です。ただし、精密検査の結果、異常なしとなるケースもあります。要精密検査の結果が出たら、必ず専門医を受診しましょう。
要治療
治療が必要な異常値が出ている状態であり、すみやかに専門医の受診が必要です。
かかりつけ医でアドバイスを受けましょう
当院では、その方に合わせた生活習慣の改善法などについて、きめ細かくアドバイスを行っていますので、結果が気になっている場合にはご相談ください。
健康診断や人間ドックで気になること
メタボリックシンドロームは治療が必要な病気だと思えないのですが……。
生活習慣病は血管に大きな負担をかけ続けて動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクを上昇させます。複数の生活習慣病を合併すると、それぞれの状態は治療の必要がないほど軽度でも、状態が早く悪化しやすいため適切な治療が必要です。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪を過剰に蓄積し、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病をいくつか合併している状態です。腹囲「男性85cm、女性90cm以上」、血圧「130/85mmHg以上」、中性脂肪「150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満」、血糖「110mg/dL以上」のうち、2項目以上当てはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。
血糖値や血圧、コレステロールなどが、それぞれまだ異常値に届いていないから安心だと思い込んでしまうのはとても危険です。メタボリックシンドロームと指摘されたら早めに受診しましょう。
自宅では正常範囲なのに、健康診断の「高血圧」という結果が納得できません
血圧は緊張などにより高めに出てしまうことがよくあります。また、計測前に小走りに歩くといったことでも上昇します。こうしたことで健康診断の時に高い数値になってしまった可能性がありますが、高血圧は脳出血・脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患を起こす原因になりますので、念のために受診しておくと安心です。できればご自宅でリラックスしている時に何度か血圧を測定してメモしておき、それを受診時に伝えるとより正確な診断結果を得られます。
コレステロールが高いという結果が出ました。受診は症状が起こってからで大丈夫ですか?
コレステロールが高いというのは、脂質異常症であり動脈硬化を引き起こす可能性があります。動脈硬化は自覚症状がなく、脳出血・脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患が起きてはじめてわかることもあります。そのため、動脈硬化につながる脂質の異常を検査し、しっかり対応していくことが重要であり、症状が出る前の治療が不可欠です。できるだけ早く受診しましょう。
肝機能障害はアルコールを控えれば改善しますか?
肝細胞が壊れてしまうと細胞中に存在するAST(GOT)、 ALT(GPT)、 γ-GTPなどのタンパク質が血液中に増加します。健康診断ではこの数値を見て肝臓の状態をチェックします。肝機能障害があることは健康診断の検査でわかりますが、その原因を調べるためには専門医による診察が必要です。アルコールや肥満による脂肪肝、ウイルス性、薬剤性などにより、それぞれ治療法が異なってきますし、できるだけ早く治療を受ける必要がある疾患の可能性もあります。すぐに専門医を受診しましょう。
尿酸値が高いので、ビールや魚卵を控えようと思っています
尿酸値が高いと激しい痛みがともなう痛風発作を起こす可能性がありますし、腎臓に大きな負担をかけて腎不全の原因にもなります。尿酸はプリン体から作られるためプリン体を多く含んだものを控えることは大切ですが、尿酸値を上昇させる食品や飲料は数多く存在しています。たとえば、ビール以外のアルコールでも尿酸値は上昇します。そのため、定期的に受診して検査を受け、数値をしっかりコントロールしていくことが重要です。
血糖値が高いので、糖尿病と合併症が怖くて不安です
糖尿病は、慢性的に高い血糖値が続く病気で、動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞のリスク上昇だけでなく、全身の毛細血管にも重大な障害を与えて失明や下肢の切断、透析治療などにつながる合併症を起こす可能性があります。そのために、自覚症状のない初期の段階で的確な治療を受けることが特に重要な病気だと言えます。専門医を受診し、しっかり血糖値をコントロールしていきましょう。
尿検査で異常を指摘されたのですが、どんな病気の可能性がありますか?
腎機能障害、腎炎、膀胱炎、尿路感染症、尿路結石、糖尿病、腫瘍などの可能性があります。健康診断の尿検査では、血尿、糖やタンパク質の量などをチェックしていますが、この結果は前日や当日の状況によって左右されるケースが多いため、正確な診断のためには精密検査が必要です。
心電図で異常ありは、かなり危険な状態ということですか?
心電図は心臓の動きを調べる検査で、異常ありの場合には、不整脈、心筋梗塞や狭心症、心筋症や心肥大などの可能性があります。すぐに治療が必要な場合もありますが、当面は治療の必要がなく経過観察だけということもあります。それを調べるためにも。できるだけ早く精密検査を受けてください。
精密検査では、24時間の心電図を記録する検査、負荷をかけた時の心電図検査、そして心臓の動きを観察する超音波検査、CTやカテーテル検査などから必要に応じて行っていきます。
貧血で内視鏡検査が必要なのはなぜですか?
貧血の原因は鉄分不足が一般的によく知られていますが、実は慢性的な出血によって起こっているケースも多く存在します。慢性的な出血による貧血の場合、すみやかに治療を受けなければ重篤な症状を起こす危険性があるため、出血の有無を直接観察可能な内視鏡検査が必要なのです。胃潰瘍や胃がん、大腸がん、そして女性ならではの病気などの可能性があるため、早めに内視鏡検査を受けてください。
腫瘍マーカーは早期発見に役立ちますか?
前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAは早期発見に役立ちますが、他の腫瘍マーカーは健康診断や人間ドックで行うにはデメリットが大きいと当院では考えています。たとえば、腫瘍マーカーの数値はがん以外のさまざまな病気によって上昇することがよくあります。そして、数値の上昇がどの臓器によるものかを調べるためにも膨大な数の精密検査が必要になり、その結果、どこにも異常が見付からないケースもよくあります。そうした際には「見逃しているのでは」という不安だけが残ることになります。腫瘍マーカーは抗がん剤治療後の効果測定やがん再発の目安には有効ですが、早期発見には適していないため、当院では受診される方のリスクに合わせた内視鏡検査や超音波検査などを組み込むオプションをおすすめしています。